激走!氷河惑星の焼肉大作戦
「オラオラオラァッ! そこどけェッ!!」
白銀の世界に、俺の怒号がこだまする! ビュンッ! ビュンッ! 唸りを上げる雪玉が、俺の愛機・スノーモービルの横をかすめていく。ここは全てが氷に閉ざされた地球、スノーボール・アース。そして今、俺たち東の町と、宿敵・西の町による「第99回・大雪合戦戦争」の火蓋が切って落とされたのだ!
「ガハハハ! どこを見てやがるカケル! オレ様はこっちだ!」
ドォォォンッ!!
地響きのようなエンジン音と共に現れたのは、巨漢のゴンタだ。西の町のボスにして、俺の最強のライバル!
「出たなゴンタ! 今日こそ決着をつけてやるぜ!」
俺はハンドルを力任せに切り、アクセルを全開にする。エンジンが悲鳴を上げ、キャタピラが氷を削り取る! ギャリリリリッ!
「望むところだぁッ!!」
真正面から突っ込んでくるゴンタ。互いの雪玉が交差し、互いの闘志がぶつかり合う! その時だ!
メリメリメリッ……!!
不吉な音が、戦場全体の喧騒を切り裂いた。
「あ……?」 「なんだぁ!?」
俺とゴンタが顔を見合わせた瞬間、足元の巨大な氷河が、真っ二つに割れたのだ!
ドガガガガガガァァァァーンッ!!
「うわあああああッ!?」 「落ちるぅぅぅぅッ!!」
俺たちはスノーモービルごと、底の見えない奈落へとダイブした!
ヒュオオオオオ……。 風を切る音。そして、ドスンッ!
幸運にも、降り積もった万年雪がクッションになった。俺は頭を振って雪を払い、体を起こす。
「いってて……。おいゴンタ、生きてるか?」 「当たり前だ! オレ様を誰だと思ってやがる!」
ゴンタもピンピンしている。だが、俺たちの目の前にあったのは、とんでもない光景だった。
分厚い氷壁の中に、奇跡的に無傷で保存された「古代の建物」。看板には、見たこともない文字が輝いている。
《 炭火焼肉・あさひ 》
『カケル! 聞こえる!? 無事なの!?』
ヘルメットの通信機から、ミナの切羽詰まった声が飛び込んでくる。
「おう、無事だぜミナ! それよりすげぇもん見つけたぞ!」 『映像、来てるわ……。ウソ、信じられない! これ、古文書にある伝説のエネルギー補給施設、『ヤキニク』よ!』
「ヤキニク……!?」
俺とゴンタは、ゴクリと唾を飲み込んだ。 店の中、冷凍ケースに鎮座していたのは、宝石のように霜が降った、真っ赤な肉の塊!
グゥゥゥゥ~~~~ッ!!
静まり返った氷の底で、俺とゴンタの腹の虫が、盛大な二重奏を奏でた。
「……おい、カケル」 「なんだ、ゴンタ」 「戦(いくさ)は、一時中断だ」 「奇遇だな。俺も今、そう思ってたところだ!」
ニカッと笑い合うと、俺たちは行動を開始した! 考えるより先に体が動く、それが俺たちの流儀だ!
「いくぜ野郎ども! エンジンの熱を回せェッ!!」 「おうよぉッ!!」
俺たちはスノーモービルの排熱パイプをひっぺがし、店内にあった鉄板へと直結させる! アクセル全開! ヴォンヴォンヴォォォォンッ!!
真っ赤に焼ける鉄板! そこへ、伝説の秘宝「カルビ」を投入する!
ジュワァァァァァァッ!!!
「うおおおおッ! なんだこの音はァッ!?」 「まるで天使の歌声だぜぇッ!!」
立ち昇る白煙。そして、鼻腔を直撃する強烈な香り! 脂の焦げる匂い、タレの甘辛い香り! それは氷河の冷気さえも溶かす、熱狂の匂いだ!
「いただきまぁぁぁすッ!!」
俺とゴンタは、焼けたばかりの肉を奪い合うように口へ放り込んだ。
ハフッ! ハフハフッ!
噛み締めた瞬間、口の中に広がる肉汁の大洪水!
「う、うめぇぇぇぇぇッ!!」 「なんだこれはァァァッ! 力が……力が湧いてくるぅぅぅッ!!」
目から涙が溢れて止まらない。敵とか味方とか、そんなちっぽけなことはどうでもいい。この美味さの前では、人類は皆、兄弟だ!
その時だ。
「くんくん……なんだ、このいい匂いは!?」 「下からだ! 下からすごい匂いがするぞ!」
頭上のクレバスから、東の町の連中も、西の町の連中も、ぞろぞろと顔を出し始めた。
「おーい! お前らも降りてこい! 伝説の『ヤキニク』パーティーだッ!!」
俺が叫ぶと、子供たちは歓声を上げて滑り降りてきた。
「すげぇ! 肉だ!」 「こっちも焼けたぞ!」 「西のヤツになんか負けねぇぞ、食う速さならな!」
狭い氷の底は、あっという間に大宴会場へと早変わり。ジュワジュワと焼ける肉音と、「うめぇ!」という叫び声が響き渡る。カケルとゴンタは、肩を組んで大笑いした。
「ガハハ! カケル、やっぱりお前は最高だ!」 「へへっ、ゴンタもいい食いっぷりだったぜ!」
腹がパンパンに膨れ上がり、全員が幸福感に包まれていたその時。 ミナがレジの奥から、一枚の古ぼけた紙切れを持って飛んできた。
「ちょっとみんな! 大変よ! これを見て!」
ミナが広げたのは、さらに古い時代の地図。
「データ照合完了……! この先に、黄金のスープが湧き出るという『伝説のラーメン街道』が眠ってるわ!!」
その言葉を聞いた瞬間。 俺とゴンタの目が、ギラリと怪しく光った。
「「ラーメン……だと……!?」」
満腹だったはずの胃袋に、新たなスペースが爆誕する!
「野郎ども! のんびりしてる暇はねぇぞ!!」 「オレ様が一番乗りだぁッ!!」
俺たちはスノーモービルに飛び乗った。 エンジン始動! 爆音轟々!
「次はラーメンだ! 全速前進ッ!!」
目指すは地平線の彼方! 俺たちの冒険は、まだまだ終わらねぇッ!!